庭園のある家《広島市東区/注文住宅》
家の表情を豊かに人の心を穏やかにする庭の景色
風光あふれる暮らしと家族の集い「それが実現できる家ができました」
「知足(ちそく)」すなわち“足るを知る”という言葉があります。
自らの分をわきまえ、それ以上を求めないこと。
今を満足する心が豊かさをもたらすという意味です。
この文字を刻んだ有名なつくばいが、京都の龍安寺に置かれています。
そして、その言葉に感銘を受けるN様邸の庭にも、同様のつくばいの姿が。
中央部分を「口」とし、四方に刻まれた文字と合わせて「吾・唯・足・知」と読めるようになっています。
「人としても、経営者としても、“生かされている”と感じられる」と語るご主人は、経営を退かれてからは消防団長を務めながら地域貢献にも精を出されています。
築45年が経ち、愛着の深かった家の建て替えの検討を始めたのは60代も後半の頃。
大きな動機には、基礎に入ったクラック問題と地震対策、そして日照が完全に遮られて家が暗いことなどがありました。
「知り合いの設計事務所に相談しましたが、陽当たりまでを解決する策が出ず、元の家も好きだったので諦めかけていたんです。そこに、山根木材との出会いが。高低差のある土地を活かしたプランを提案してくれ、そこからは話がスムーズに進みました」。
建て替えという決断に驚かれた奥さまも、寒く薄暗かったキッチンが明るくなり、今ではとても快適に過ごされています。
また、お孫さんが7人というN様ご夫婦は、この機会に家族が楽しく集える空間づくりにも思いを添えました。
「普段は二人だけの生活なので、キッチンとダイニングだけで十分なんです。」
でも、遠方に住む娘家族が長期で帰省するとき、まだ小さな孫たちが走り回れる場所を与えてあげたいと思い、扉を開け放てば広く使えるリビングや、床暖房のある温かい家で迎えられることは何よりです」。
リビングはあらわし桁と勾配天井がアクセント。
ダイニングとの間は取り外しが可能な4枚扉となっており、客間にもなる和室の襖を開け放つと、ひと続きの大空間になります。
ご主人は、以前の住まいでも自作していたほどのサウナ好き。
既製品の壁を加工して出入口を作り、サウナから出てすぐシャワーが浴びられるような動線にこだわりました。
四季や一日の移り変わりが心に染み入る暮らし
居心地の良さから、以前は多かった外出が減り、家の中から見る景色を楽しむ機会が増えたそうです。
それを彩ってくれているのが、あのつくばいも見守る庭。
いつもご夫婦は隣り合わせで会話を楽しみます。
「この席からの眺めが一番です」とご主人。
美しくしだれ梅が咲いたかと思うと、そこに現れたのは「実際に見たのは初めてだった」という、うぐいすの姿でした。
四季を伝える草花、その先に見える山の稜線、昇る太陽と月の満ち欠け、庭に届く光と、その影までも、すべてが新鮮に映るようになったのです。
短歌づくりが趣味の奥さまはアイデアが湧き出るようになりました。
ワイン好きのご主人は、ダイニングに座って飲む一杯に風情がプラスされました。
次は、自宅の入り口で、シンボルツリーにと植えたクロガネの木が育つのを待つばかり。
赤い実に鳥が引き寄せられる風景は、また違った味わいをN様邸にもたらしてくれるでしょう。