樽煎餅と木の家《東広島市西条本町/注文住宅》
樽煎餅と木の家
東広島市西条・酒蔵通り。
平田屋の樽煎餅は西条の定番の味として長く親しまれている。
老舗の貫禄と親しみやすさを併せ持つその店舗には、巧みな和の工法と煎餅や道具に対する家族の愛情が溢れていた。
地元に愛される老舗 所縁ある人の思いに囲まれて
創業1916(大正5)年。
平田屋は100年以上の歴史を持つ老舗の煎餅店だ。
JR西条駅から歩いて5分。この辺りは白壁の酒蔵が軒を連ねる、西条の観光地でもある。
駅前開発によって平田屋がこの地に移転したのは15年ほど前。
店舗と煎餅を焼く作業所、そして住まいを兼ねて建てられた。
現在お店は、二代目である奥様とその娘さんが切り盛りしている。
通りから店内の様子がよく見えるようにと開口部を大きくとった親しみやすい店構え。
知人に書いてもらったというケヤキの看板と、深い軒が店の風格を表している。
書を嗜んでいた亡夫の「一味真」という作が、店と家族を見守っているようだ。
さりげなく取り入れた伝統的な和風の工法
店舗は本格的な和の佇まい。
住居部分も含めて窓はすべて格子で覆われており、軒を支える丸太のスギが頼もしい。
店内を見上げると、猿頬縁(さるぼおぶち)が組まれた網代天井。
これは京都の町屋や茶室にも使われる工法。
収納棚の取っ手には酒樽のシルエットをくり抜いたアイデアも。
設計のところどころに遊び心がちりばめられていて、煎餅屋らしい親しみやすさがにじみ出ている。
先代から譲り受けた大切な道具と手法がこの店の財産
煎餅は小麦粉、砂糖、はちみつ、水飴を練った創業当時と変わらぬどこか懐かしい味。
酒樽の型に焼かれ、西条6社の酒蔵の焼印が入った、酒の町・西条を印象づけたデザインだ。
この焼印の鋳物(いもの)も創業時からずっと使われているもの。
きれいな焼印が付くよう毎日手入れされているため、年季の入った光沢が美しい。
奥様と娘さんとで回転式の焼き型を使い、1枚1枚煎餅を手焼きして焼印を入れる地道な作業。
創業時から煎餅の形も味も変えることはなく、のれんを守っている。
西条の町に愛され、酒蔵の町を象徴する店として、二人はその看板を守り続けていく。
平田屋樽煎餅本舗
住所:東広島市西条本町14-13
TEL:082-422-2400
営業時間 8:00~18:00/不定休